とっつぁんnote

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たった3日間の青春が永遠に胸を打つ!映画『リンダ リンダ リンダ』

好きな映画なに?
と聞かれた時におすすめする映画の中の1本。
2005年公開、山下敦弘監督、ペ•ドゥナ主演の青春映画『リンダ リンダ リンダ』です。

とある地方都市の高校。文化祭を目前にしたある日、軽音楽部の5人組ガールズバンドのギタリストが指を骨折し、内輪揉めによってボーカルが脱退してしまう。残された3人のメンバーは途方に暮れながらも、成り行きから韓国人留学生ソンを新しいボーカルとして迎え、ザ・ブルーハーツコピーバンドを結成。文化祭最終日の本番に向けて練習を重ねていくが……。

いやまず、タイトルがめちゃくちゃよくないですか?
彼女たちが文化祭で披露するブルーハーツの「リンダ リンダ」から『リンダ リンダ リンダ』。
「女子高生がブルーハーツ。ボーカルは韓国からの留学生?!」というキャッチと、この『リンダ リンダ リンダ』というタイトルで俄然見たくなりました。

「リンダ リンダ」の後にもう1回「リンダ」付けようって言った人誰ですかね。ちょっと呼んできてもらっていいですか?
両手で手を握って「天才です」と心の底からお伝えしたい。このタイトル天才ですよ。一瞬でザ•ブルーハーツの曲に関わる映画だとわかるし、『リンダ リンダ リンダ』に「リンダ」をもう1回重ねることで本格的な「リンダ リンダ」から少し離れて可愛らしさも生まれてます。
例えば「リンダ リンダ リンダ リンダ」と4回も続いたら鬱陶しい。1回でもダメだし、2回じゃただの曲名としか思わない。3回が最高。
繰り返します。『リンダ リンダ リンダ』考えた人、天才。マジで天才。
いいタイトルつけてくださって有難うございます!と曲げられるだけ腰を曲げて頭を下げたい。


さて、本編。
軽音楽部の前田亜季香椎由宇関根史織が、たまたまそこにいた留学生のペ•ドゥナを勧誘して急遽4人でバンドを結成するんですけど、この4人の演奏と歌がね、うまくないんですよ。正直全然うまくない。4人の才能が合致して奇跡のコピーバンド誕生!とかじゃありません。
関根史織さんはロックバンド「Base Ball Bear」のベースということで彼女はキレキレなんだと思うんですけど、なにぶん他が初心者なので初めての音合わせの時とか「……お、おう……」という感じの出来栄え。ごくごく普通の女子高生がコピーバンドやってます、という空気感そのもの。 

バンドの4人はテンションがあまり高くありません。キャーキャー盛り上がるわけでもなく、ボソボソと会話をしながら、それでも少しずつ4人の距離が縮まっていくのがいいんです。


前田亜希たちがペ•ドゥナをバンドメンバーに誘ってから文化祭まではなんと3日間しかありません。
そのたった3日間の青春が、初めてこの映画を観てから20年近く経った今でも胸を打ちます。


「ソンさん」と呼んでいたペ•ドゥナを、「ソンちゃん」→「ソン」と呼ぶようになる過程がいい。
文化祭で『日韓交流文化展示会』というものをやらされているペ•ドゥナが、誰も観にこないその展示会の教室で昨夜の練習の疲れですっかり寝てしまっているところがいい。
韓国からの留学生という特殊な立場にいたペ•ドゥナが、ブルーハーツのロックを、あの歌詞を、力一杯歌うところがめちゃくちゃいい!!!

そうだよ、本当の交流ってこうなんだよ!
日韓交流文化展示会じゃないんだよ!
一緒に何かをすることで、くだらない話をすることで、相手のことを好きになって、相手のことを知りたいって思うんだよ!
その子がいるから、つまらなそうな展示室も行ってみようと思う、それが友情なんだよ!!!!
と酔っ払った熱いおっさんみたいに語りたくなってしまう映画です。

自分の人生にあの3日間があったなら。
それだけで一生生きていける!とまでは言いませんが、疲れた時とか寂しい時にふとあの3日間を思い出して、なんとなく励まされたり笑ってしまったりする気がします。


4人は、文化祭後はあれ以上仲良くなるとか、いつも一緒にいるようになるとか、そんな風にはならなかっただろうなと個人的には思っています。もちろん、校内で見かけたら手も振るだろうし、すれ違ったらちょっと話したりするだろうけど、4人の距離はあの3日間が1番近かった気がします。
それは寂しいことでもなんでもなくて、本当にいろんな偶然が重なってあの日があったという感じ。

不思議なんですけど、この映画なんとなくのんびりした時間が流れてるんですよね。3日で曲を完成させなきゃいけないって焦ってるはずなのに、何故か映画の空気はゆったりしていて、ちょっとくすんでいて、その空気感に妙なリアリティがあります。 


私が1番好きなのが、文化祭の前日の夜にこっそり学校に忍び込んで練習する4人のことを軽音楽部の顧問の先生が見つけるんですけど、注意しないところです。怒って追い出すでも、わざと明るく声をかけて「他の先生には見つかるなよ」と声をかけるでもなく、黙って見逃してあげる先生が好きです。

あの先生、私です。

私というか、かつて高校生だった人全員かもしれません。
その時がどんなに特別な時間なのか知ってる全員、その思い出がずっと残るものになると知っている全員があの先生の気持ちになりました。

文化祭本番も、生徒たちが4人のブルーハーツに盛り上がる中、体育館の後ろの方で先生は静かに聴いていました。

私もそうです。私があの場所にいても、4人の演奏に「いぇーーーい!!!へい!へい!」みたいなノリにはきっとなりません。
ただ、その羨ましいくらいの青春に、少しだけ微笑んで静かに聴くくらいしかできないと思います。

あの誰もいない昇降口も、誰もいない踊り廊下も、土砂降りの雨も、今も胸に迫ります。


そしてこの映画の前田亜希、めちゃくちゃかわいいです!!!もともとかわいいなとは思っていたんですけど、この映画の前田亜希は本当にかわいい。可愛さが異常。
好きな男の子に告白しようとして言えなかったりするんですけど、「言っちゃえよ〜!!!絶対大丈夫だからさ〜!!!!」って言いたくなります。
彼女の等身大の可愛さを刻みつけてくれた映画があってよかった。


他の青春映画とは一線を画す青春映画『リンダリンダリンダ』。
今の時期なら花粉症のせいにできるので、涙と鼻水ダラダラ流してご覧ください!

 


おしまい。

 

イラストは『プレバト』に影響されて初の一筆描き。
雰囲気。雰囲気が大事。