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予想が見事に外れた映画『沈黙のパレード』

東野圭吾のベストセラー小説を原作に、福山雅治演じる天才物理学者・湯川学が難事件を鮮やかに解決していく姿を描く大ヒット作「ガリレオ」シリーズの劇場版第3作『沈黙のパレード』を見ました。

とりあえず言いたいんですけど、タイトルバックの演舞、オリンピックのイメージ映像か何かかと思いませんでした?
そこまでの流れや雰囲気を断ち切って、いきなりあれがどどん!と始まったので、なになに?オリンピックでも始まるの?と1人で焦りました。

オープニングから掴みはばっちり。
お祭りのステージで高校生•並木佐織(川床明日香)が歌う「jupiter」に乗せて、赤ちゃんの頃から高校生まで、彼女がどれほど愛されていたか、これからの希望に溢れていたかが周囲との関わりと併せて描かれ、最後に入る内海薫(柴咲コウ)のナレーションによって、彼女が既に死体で発見されたという事件の説明だとわかります。

うますぎ。少女がどんな風に愛されて輝いて生きてきたがこの短い時間にわかって、佐織が死んでいるということがもう悲しかったです。視聴者にいきなりここまで思わせる流れ天才。

脚本誰?!と思って調べたら、テレビと前2作のガリレオシリーズを手がけた福田靖でした。
そりゃあ、うまいですよね!大河『龍馬伝』、朝ドラ『まんぷく』も書かれている売れっ子脚本家ですよ。むしろ私みたいな奴が「うまい」なんて偉そうに言ってすみません。

 

さて、本編について。

※ここからネタバレになるので、ご覧になっていない方、これからご覧になる予定がある方はご覧になってからまた来てください!


満場一致だと思いますけど、蓮沼寛一(村上淳)がひどかった…!
ええ、語り合いましょう。あいつは異常です!
店に来たじゃないですか。あれ、ほんと何したかったんですか?完全に喧嘩売りに来ましたよね。
店のみんなの気持ちが伝染して私もムカつきが止まらず、「よし、もうみんなでこいつやっちゃお!やるしかない!」と声に出してました。
それくらい蓮沼はやばかった。被害者家族のお店に顔出しにいくなんて正気の沙汰とは思えませんよ。完全なサイコパス
村上淳がまたうまいんですよね。もうこいつには何言っても無駄だ、やるしかない、という殺意を抱かせる存在。
佐織の父親(ずん・飯尾和樹)もギリギリでしたけどね。私もあそこにいたら包丁握りしめて蓮沼に突進する自信あります。心の中で包丁握りしめました。

店に充満する憎悪の空気。
店にいる人全員(佐織の両親、妹、元恋人、歌の先生、佐織を可愛がっていた近所の人たち)の蓮沼を憎む気持ちがビシビシと伝わってきます。
もうこれはみんなで計画して、誰かのアリバイは別の誰かが証明して、その誰かのアリバイはまた別の誰かが証明して、というようにみんなで協力してあいつ(蓮沼)を殺すしかない、と思いながら見ていて気がつきました。私、初めて犯人を知らない状態で東野圭吾原作の映画を見ていたのです。

東野圭吾原作の映画化は多数ありますが、昔はかなり東野圭吾の小説を読んでいたので、映画化やドラマ化されたとしても内容を知った状態で見てたんです。
それが、近年あまり東野圭吾の小説を読んでいたなかったこともあり、今回初めて内容や結末を知らないまま『沈黙のパレード』を見ていました。
うむ、内容を知らないで見るのも新鮮でいい。

この時点でとりあえず動機があるのは関係者全員。
『沈黙のパレード』というタイトルから、おそらくイベントのパレード中にあの蓮沼は殺される。
殺人の方法は、個人的に、オリエント急行殺人事件(容疑者全員が犯人)。

そして物語は進み、蓮見は殺され、なんとなく本当にみんなで協力して(各自いろんな役割が振られて)やった感が漂ってきます。
お、マジでオリエント急行殺人事件式か?

ただ、今回の計画では、殺人が目的だったわけではなく、蓮沼を追い詰めるだけ追い詰めて、自白させようという計画だったことがわかります。
……まぁそれはそうですよね。殺人の計画を大勢に相談して実行に移すのはさすがに難しいですよね。←心なしか残念。

また、佐織の元恋人(岡山天音)が警察から怪しまれ、誰から話を持ちかけられたか確認された際に比較的するっと佐織の父親の幼馴染(田口浩正)の名前を出したところでおや?となりました。みんなでみんなを庇うのではないのか?
幼馴染は幼馴染で、別の人の名前を出したりして、みんなで庇い合う空気がなんだか薄い。

そして、本来は蓮沼に自白させる役割だった佐織の父親は、パレードの際に店で体調不良になった客を病院に運ぶため、計画の断念を連絡したことがわかります。
それでも蓮見は殺され、佐織を育てていた音楽プロデューサーの新倉直紀(椎名桔平)が自首します。

いくら可愛がっていたと言っても、音楽プロデューサーが実行犯になるか?

 

そこでピンときました。
パレードの時、殺された佐織の妹•夏美(出口夏希)のところに両親から電話がかかってきていたのです。店の客が倒れたと連絡を受けた夏美は急遽店に戻りました。

完璧なイレギュラー。
蓮見を1番憎んでいるはずの被害者の両親は、倒れた客を病院に連れていくため、に蓮見を殺せなくなってしまったのです。
そしてお店のために急遽家に戻った妹の夏美。

 

……最終的にやったの、妹やないか?

辻褄が合う。
姉を殺された妹。用意された舞台。疑われた人たちから出るいろんな人の名前。
みんな妹を庇ってるんじゃないか?

しかも妹は湯川先生(福山雅治)と仲がいい。
彼女が犯人だった場合の、主人公の苦悩まで描ける。あの賑やかなパレードと対比する、周囲の沈黙。

犯人は妹だ……!!!!!!!
(展開つらすぎるけど)


と、確信したんですけどね、違いました。
全然違いました。
妹、全く関係なしでした。


なんと佐織を殺したのが新倉直紀の妻の留美檀れい)だったのです。(しかもこれすら後から違うことがわかります)
子供ができたからデビューは諦めるとデビュー直前に留美に相談してきた佐織。必死に引き留める留美に、留美は自分に嫉妬してると佐織は叫び、それを聞いた留美は思わず佐織を突き飛ばしてしまったのです。そして倒れた佐織は運悪く工事中の資材に頭を打ちーー。

 

おいおいおいおいおいおいおいおい!!!!!

 

何だこの展開。めちゃくちゃ胸糞悪くないか?
そもそも、佐織はあんなにデビューしたそうだったのに、周囲にサポートしてもらいながら夢に向かって一直線っぽかったのに、あの佐織は幻だったの?佐織の死を悲しんで、蓮見にいらついて心の中で包丁を握った私はなんだった?

そして妊娠って…。彼氏何しとん。あんなに彼女の夢を応援してる感だしといて、なに高校生の彼女妊娠させとんじゃ!
……いや、その辺のことは何も描かれてなかったからわからない。どんなハプニングかわからないけど、とりあえず予期せぬハプニングということにしておいてやろう。(これで避妊してなかったらぶっ飛ばすぞ)

 

佐織よ。妊娠というハプニングがあったとして、情緒不安定になってるとして、それでも留美にあんなに失礼で残酷なことを言っていいことにはならないぞ。
お前これまでどんだけ新倉直紀と留美に世話になったと思ってんの?デビューが決まったあの段階で「辞めます」なんて、どんだけ沢山の人に迷惑かけると思ってんの?新倉さんのメンツも丸潰れで、新倉さんも信用をなくすんだよ?そういうこと、全部わかった上での「辞めます」なのか?

その上での「私に嫉妬してる」「先生には夢を押し付けられる」「見張られてストーカーみたい」発言は、誰でもカッとなって突き飛ばすわ。突き飛ばすか平手打ちするか水ぶっかけるかの3択だよ。たまたま留美は突き飛ばしただけ。

 

佐織が倒れた時、死んだと思ってその場を離れたのは留美もよくなかった。でも正気になってちゃんと戻ったのは偉かった。その隙に蓮見に佐織を運ばれたのは不運以外の何ものでもない。

挙句に、実は留美が突き飛ばして頭を打った段階では死んでなかった(やはり後から蓮見が殺した説が濃厚)ことまでわかる。
おい……留美を守るために新倉直紀は蓮見殺しちまったじゃねーか…。もうどうしたらいいんだよ…。

 

オープニングから佐織を「夢に向かってまっすぐないい子」と決めつけ、視聴者として最大限の憎悪を蓮見に向けていたこちらの気持ちは?
佐織に夢を叶えさせてあげたかった、デビューさせてやりたかったと思って佐織の死を悼んでいた我々の気持ちはどうしたらいいんですか?

佐織、デビュー辞めます言うとったじゃん。
高校生で同級生の彼氏の子を妊娠して、彼と結婚して子供産む言うとったじゃん。
世話になった人にとんでもない暴言浴びせとったじゃん。


……さようなら。可愛くて、素直で、まっすぐで、歌が大好きで、夢に向かって一生懸命で、周囲の人を大切にして、大切にされている佐織。
すべて私の中の幻想だった「佐織」。


どんなにいい子でも、そういう一面もあるかもしれない。

でも正直見たくなかったよ!こっちは人間不信だよ!


愛された少女のために、みんなで仇を討つ、じゃああまりに単純ですもんね。東野圭吾がそんなストーリーにはしないですよね。
でも、なんか、なんか、なんか……!

途中まで面白かったので多少残念な気持ちになりましたけど、復讐を美談にしてはいけないですし、人には周囲には見せない一面も持っているものでしょうし、何事も決めつけて物事を見てはいけないということで自分を納得させました。

あ、この物語の核として、かつて同じく殺人事件の容疑者だった蓮沼を逮捕できなかった草薙(北村一輝)の葛藤もあったのですが、感想書いてて全くそこに触れてませんでした。
北村さんは熱演でした。それについても語りたいです。


が、力尽きたので、
おしまい!